社用スマホの保護フィルムは破損対策にならず傷を防ぐだけの装備です

ナルセ
保証の中身を1つずつ確かめている調査員です。AppleCare+にiPhoneを2年入れて、修理は一度もありませんでした。今はモバイル保険に切り替えて使っています。

保証を横に並べて見比べたい方へ。AppleCare+・キャリアの補償・モバイル保険を1ページにまとめています。

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社用スマホを配るときに、保護フィルムも一緒に配る会社は多いと思います。破損を減らす目的で予算が付いていることも珍しくありません。

フィルムが実際に防いでいるのは傷であって割れではなく、保険会社の側もフィルムが守る領域を修理費の対象から外しています。この記事では、フィルムが何を防ぎ何を防がないのかを公式の文言と法令で切り分けたうえで、社員17名の会社で年額がいくらになるかを数えました。

社用スマホの保護フィルムの破損対策としての効果は傷までです

フィルムの守備範囲は、画面の表面に付く細かい傷までです。落下の衝撃を吸収して本体の破損を止める装備ではありません

起きることフィルムで防げるか修理費が発生するか
表面のすり傷防げる発生しない
汚れ・指紋防げる発生しない
落下による画面割れ防げない発生する
フレームの変形防げない発生する
水濡れ防げない発生する

表を縦に見ると、フィルムが防げる行と修理費が発生する行が一つも重なっていません。会社が金を失う場面と、フィルムが働く場面が別々になっています。

モバイル保険の公式は、保険金の対象になる事態を次のように挙げています。

モバイル保険は、登録している通信端末に「外装破損」、「損壊」、「水濡れ全損」、「故障」、および「盗難」が生じ修理費用などを負担したとき、または修理不能となった場合に、年間最大15万円(通算)まで保険金をお支払いたします。

並んでいるのは外装破損・損壊・水濡れ全損・故障・盗難の5つで、すり傷は入っていません。保険が金銭リスクとして数えている事態のなかに、フィルムが担当する領域が一つもないということです

社用スマホの保護フィルムの9Hは鉛筆硬度で耐衝撃性ではありません

9Hは傷の硬さの話

商品説明でよく見る「硬度9H」は、鉛筆の芯で引っかいたときに傷が付くかどうかを表す数値です。落としたときに割れるかどうかを表す数値ではありません。

  • 9Hは鉛筆硬度の等級で、9Hの鉛筆で引っかいても傷が付かないことを意味する
  • 測定は塗膜の引っかき硬度を調べる試験方法にもとづく(JIS K 5600-5-4・調べた時点)
  • 引っかき硬度と、衝撃を受けたときの割れにくさは別の性質
  • 表示されている数値が高くても、落下時の挙動は測定されていない

引っかきに強いことと、割れにくいことは、試験そのものが違います。硬いガラスほど曲がらずに割れるという性質もあり、数値が高いほど破損に強いという読み方は成り立ちません。

硬度の数値は傷の指標であって、破損の指標ではありません。数値が大きい商品を選んでも、防げるものは傷のままです。

社用スマホの保護フィルムの硬度表示には根拠資料の提出義務がついてきます

表示の裏付けについては、法律の側にすでに仕組みがあります。景品表示法は、実際より著しく優良だと示す表示を禁じています。

事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。

一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

ここで効いてくるのが、第7条第2項に置かれた資料提出の求めです。表示をした事業者が裏付け資料を出せない場合の扱いまで、条文に書かれています。

内閣総理大臣は、前項の規定による命令(以下「措置命令」という。)に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。

条文資料を出さなかった場合
第7条第2項(措置命令)優良誤認表示とみなす
第8条第3項(課徴金)優良誤認表示と推定する

課徴金の側の文言は「推定する」で、措置命令の側は「みなす」です。言い換えれば、裏付けを出せない性能表示は、行政の判断では違反として扱われる構造になっています。

この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示と推定する。

購入する側としては、数値そのものより、その数値が何を測ったものかを見るほうが確実です。割れたときにいくらかかるかは、社用iPhoneの画面割れの修理費の側で決まります。

モバイル保険は月700円(非課税)で、主端末1台と副端末2台の最大3端末までを1つの契約で補償します(登録できるのは被保険者本人が使用または所有する端末に限られます・調べた時点)。ガラスフィルムの交換行為は支払い対象外ですが、落として割った画面やフレーム、水濡れや故障は修理費が実費で戻ります。登録できるのは公式が条件とする「登録時において破損などなく全機能が正常に動作するもの」で、取得から1年を過ぎた端末はメーカーかキャリアの有償補償に加入していることが要ります。フィルムを何枚配るかとは別に、割れた1台を受け止める側の仕組みとして置けます。
フィルムでは戻らない修理費が実費で戻ります。

月700円・最大3台まで

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社用スマホの保護フィルムは保険でも交換費用が戻りません

フィルム自体が割れた場合の費用も、端末保険からは出ません。モバイル保険の公式は、支払い対象にならない行為を名指しで挙げています

① 通信端末の本体機能と関係のない補修や交換作業

・すり傷、汚れ等の本体機能と直接関係のない外形上の補修行為

・ガラスコーティングやガラスフィルムなどの交換行為

3つ並んだうちの2つが、フィルムに関わる項目です。すり傷の補修とフィルムの交換が、同じ免責のリストに入っています。

行為保険金理由
すり傷の補修出ない本体機能と直接関係がない
ガラスフィルムの交換出ない本体機能に対する修理ではない
画面(表示装置)の修理出る本体機能に対する修理

保険会社の線引きは、本体の機能が戻るかどうかで引かれています。フィルムは機能を担っていない部品なので、割れても交換費用は会社の持ち出しになります

社用スマホの保護フィルムの費用を社員17名で数えました

社員17名に社用スマホを1台ずつ持たせている会社を想定して、フィルムに払う年額を出しました。年1回の貼り替えで計算しています。

項目単価年額
ガラスフィルム2,750円17台46,750円

1台あたりで見れば数千円ですが、17台まとめると年46,750円になります。この金額で会社が回避できているのは、表面の傷だけです。

同じ会社が端末保険に入った場合の年額と並べます。モバイル保険の被保険者は個人で、登録できるのは被保険者が使用者か所有者である端末に限られるため、社員1人に1台という構成では契約が17本になります。

支出計算年額割れたときに戻るか
ガラスフィルム2,750円×17台46,750円戻らない
画面修理(保証対象外・年3件)42,800円×3件128,400円戻らない
上の2つの合計175,150円
モバイル保険700円×17契約×12か月142,800円実費が戻る

フィルムを配っても修理費は別に出ていきます。フィルム代46,750円と修理費128,400円を足すと175,150円になり、保険料142,800円より32,350円多くなります

保証対象外で画面を修理すると、Appleの正規で42,800円かかります(調べた時点)。フィルムが減らせるのは傷だけなので、この42,800円は貼っていても貼っていなくても同じように出ていきます。

フィルムを配るかどうかより先に、割れた3件をどう処理するかを決めるほうが金額が大きく動きます社用スマホの保証が必要かどうかを判断する材料も、この並びのなかにあります。

社用スマホの保護フィルムより先に割れたまま使わせない決めが要ります

割れた画面を止める3手順

割れた画面のまま社員に使わせ続ける状態には、費用とは別の問題があります。労働契約法は使用者の配慮義務を定めています

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

割れたガラスの縁で指を切る事態は、業務中に会社が貸与した機器で起きます。労働安全衛生法にも、最低基準を守るだけでは足りないという書き方があります。

事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。

現場で決めておくことは3点です。

  • 画面が割れた端末は使用を止めて申告する
  • 申告から修理までの間に貸し出す代替機を用意する
  • 修理費の負担を誰が持つかを配布時に文書で示す
  • 割れたまま業務を続けさせる運用は、フィルムを配っていたかどうかとは無関係に会社側の判断として残ります

フィルムの有無は、割れた後の運用を何も決めてくれません。決めるべきは、割れた端末を止める手順のほうです。

社用スマホの保護フィルムで会社が本当に減らせるのはのぞき見です

フィルムに予算を付ける根拠として説明が付くのは、破損対策ではなくのぞき見防止のほうです。個人情報保護法は安全管理措置を義務として定めています。

個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。

外出先で顧客情報を扱う社員がいる会社では、画面を横から見られることも漏えいの経路になります。のぞき見防止フィルムは、この経路を物理的に狭める装備として説明が立ちます。

フィルムの種類主な目的会社としての根拠
強化ガラス(高硬度)傷の防止資産の外観維持
のぞき見防止視野角の制限安全管理措置の一部
抗菌・防指紋衛生・清掃性職場環境の維持

同じフィルムでも、破損対策として買うのか、安全管理措置として買うのかで説明の仕方が変わります。後者なら、外回りの社員だけに配るという絞り方も筋が通ります。

社用スマホの保護フィルムを貼っても漏えいの報告義務は消えません

のぞき見を防いだとしても、端末を紛失したり中身が漏れたりしたときの手続きは残ります。個人情報保護法は報告を義務として書いています

個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失、毀損その他の個人データの安全の確保に係る事態であって個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則で定めるものが生じたときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を個人情報保護委員会に報告しなければならない。

報告先は委員会だけではありません。本人への通知も、同じ条文の第2項に書かれています。

前項に規定する場合には、個人情報取扱事業者(同項ただし書の規定による通知をした者を除く。)は、本人に対し、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を通知しなければならない。

フィルムを配って対策を終えた気になると、報告の段取りが手つかずのまま残ります。端末の台帳や貸与記録の整え方は、法人の端末保証の管理のほうで扱っています。

社用スマホの保護フィルムの破損対策で会社が先に決める3つのこと

予算を付ける前に決めておくと、フィルムを買うかどうかの判断が自動的に決まります。順番は次のとおりです。

  • 割れたときの修理費を会社が持つのか社員が持つのかを配布時に決める
  • 割れた端末を止めて代替機に切り替える手順を書いておく
  • 傷の防止として買うのか、のぞき見の防止として買うのかを分けて予算化する
  • 3点を決めないままフィルムだけを配ると、割れた後の判断がその都度の相談になります

1点目が決まると、修理費を会社が持つ場合は端末保険を検討する流れになり、社員が持つ場合は貸与の条件を明文化する流れになります。どちらに転んでも、フィルムの硬度は判断材料になりません。

配布時の文書に、割れたときの負担と申告先を1行ずつ書き足してください。フィルムの発注より先に決まっていないと、割れた日に決めることになります。

社用スマホの保護フィルムの破損対策についてよくある質問

Q. 社用スマホの保護フィルムは破損対策として意味がないのですか

A. 傷の防止としては働きますが、落下による割れの防止としては期待できません。

保険会社が修理費の対象としている事態は外装破損・損壊・水濡れ全損・故障・盗難の5つで、すり傷は入っていません。フィルムが担当している領域は、そもそも修理費が発生しない側にあります。

Q. 硬度9Hのフィルムなら画面は割れませんか

A. 9Hは引っかき傷への強さを表す数値で、落下時の割れにくさとは別の性質です。

鉛筆で引っかく試験と、衝撃を受けたときの挙動は測定している内容が違います。数値が高い商品でも、防げる範囲は傷のままです。

Q. 保護フィルムが割れた場合の交換費用は保険で戻りますか

A. 戻りません。公式が「ガラスコーティングやガラスフィルムなどの交換行為」を支払い対象外として挙げています。

保険の線引きは、本体の機能が戻る修理かどうかで引かれています。フィルムは本体機能を担う部品ではないため、交換費用は会社の持ち出しになります。

Q. のぞき見防止フィルムは全社員に配るべきですか

A. 顧客情報を外出先で扱う社員に絞るほうが、説明が立ちます。

個人情報保護法が求めているのは、取り扱う個人データに対する必要かつ適切な措置です。社内でしか端末を使わない社員まで一律に配ると、目的と装備がずれます。

Q. 割れた画面のまま社員に使わせても問題ありませんか

A. 労働契約法が使用者に安全への配慮を求めているため、放置したままにはできません。

割れた端末を止めて代替機に切り替える手順があるかどうかで、会社側の対応の説明が変わります。フィルムを配っていたかどうかは、この判断とは関係しません。

会社が保護フィルムに払っている金額は、傷を防ぐための費用です。割れたときに動く金額とは桁が違ううえに、両者は同じリスクを見ていません。

予算を組む前に、割れた1台をどう処理するかを先に決めておくと、フィルムを何枚買うかは後から自然に決まります。傷は防げますが、落として割れた画面の修理費は別の仕組みで受け止めることになります。

結論:社用スマホの保護フィルムは、傷を防ぐ装備であって破損対策ではない。9Hは鉛筆の芯で引っかいたときの強さを表す等級で、落下時の割れにくさを測った数値ではない。モバイル保険の公式は「すり傷、汚れ等の本体機能と直接関係のない外形上の補修行為」と「ガラスコーティングやガラスフィルムなどの交換行為」を並べて支払い対象外に挙げており、フィルムが守る領域はそもそも保険会社が金銭リスクと見ていない側にある。社員17名にフィルムを配ると年46,750円かかり、それを払っても割れた3件の修理費128,400円は別に出ていくので合計175,150円になる。モバイル保険の被保険者は個人なので同じ17名は17契約で年142,800円、保証対象外なら42,800円かかる画面修理が実費で戻ったうえで、フィルムと修理費の合計より32,350円少ない。予算を付ける前に、割れた端末を止める手順と修理費の負担者を決めておくほうが金額は大きく動く。
傷ではなく修理費のほうを受け止める仕組みから確認してください。

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