保証を横に並べて見比べたい方へ。AppleCare+・キャリアの補償・モバイル保険を1ページにまとめています。
社用スマホの保証をどうするか決めるとき、最初に開くのは料金表だと思います。月にいくら、年にいくら、何台まで。
ただ22台分の見積りを前にして、私が引っかかったのは別のところでした。保証に入らなかった場合、その修理費は誰が払うのかという点です。
個人のスマホなら答えは決まっています。壊した人が払います。
社用スマホは壊す人と払う人が分かれます。この記事では労働基準法の条文を先に確かめたうえで、社員22名22台の年額を計算しました。
社用スマホの保証が必要かは修理費を誰が払うかで決まります

保証の要否は、料金の高い安いの話ではありません。保証に入らなかったときに、その穴を誰が埋めるかの話です。
選択肢は3つあります。保証に入る、会社が都度払う、社員に負担させる。
3つの選択肢で負担者がどう変わるかを並べます
| 選択肢 | 平時の支出 | 修理が起きたとき | 予算として読めるか |
|---|---|---|---|
| 保証に入る | 毎月の保険料 | 上限まで戻る | 固定費として読める |
| 会社が都度払う | なし | 全額を会社が出す | 読めない |
| 社員に負担させる | なし | 社員が出す | 会社に発生しない |
3つ目が使えるなら、保証を買う理由はかなり薄くなります。修理費が会社の外に出ていくからです。
多くの会社が「壊した本人に一部でも負担させるべきでは」という話をするのは、この3列目を期待しているからだと思います。
個人向けの記事がこの分岐を扱わない理由
個人向けの「保証はいらない」という記事は、壊す人と払う人が同じ前提で書かれています。貯金があるなら保証を買わずに自分で払えばいい、という論法です。
社用スマホでは、この論法の主語が2つに割れます。壊すのは社員で、払うのは会社です。
AppleCare+という商品そのものの要否を条件で見た話は会社支給iPhoneにAppleCareが必要かを調べた記事にまとめています。
保証なしという選択は、修理費を誰かに回せる場合にだけ成立します。その相手を社員にできるかどうかを、料金表より先に確かめます。
社用スマホの保証が必要かを考える前に社員へ請求できるかを確かめます
社内から出てくる「壊した本人に負担させる」という案は、そのままの形では通りません。労働基準法が3つの条文で制限しているためです。
3つの条文が制限していることを並べます
| 条文 | 定めていること | 社用スマホへの影響 |
|---|---|---|
| 第16条(賠償予定の禁止) | 労働契約の不履行について違約金を定め、損害賠償額を予定する契約をしてはならない | 破損時の金額を先に決められない |
| 第24条第1項(賃金の支払) | 賃金は通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならない | 修理費を給与から引けない |
| 第91条(制裁規定の制限) | 減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない | 減給の形にしても回収額に上限がある |
第16条は、金額をあらかじめ決めておく形そのものを禁じています。貸与規程に「破損したら一律1万円」と書く方法が、ここに当たります。
第24条第1項には全額払いの原則があります。控除するには、労働者の過半数を代表する者との書面による協定という別の手続きが要ります。
減給という形にしても上限があります
第91条は、就業規則で減給の制裁を定める場合の上限を決めています。1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1賃金支払期における賃金の総額の10分の1までです。
月給30万円の社員なら、1回に引ける額は5,000円前後にとどまります。 12,900円の修理費をこの形で1回のうちに回収することはできません。
社員に故意や重大な過失があった場合に、個別に協議して負担を求めること自体が禁じられているわけではありません。制限されているのは、金額を先に決めておくことと、勝手に引くことです。

3つを合わせると、修理費の大半は会社の費用として立つという前提になります。この前提の上で、保証を買うかどうかを決めます。
社用スマホの保証が必要かは修理費を全額持てるかで分かれます
前提が決まったので、ここから要否に入ります。保証なしで問題なく回る会社は実際にあります。
保証を買わなくても回る会社の条件
- 過去3年の修理発生が年0〜1件で、突発の出費が資金繰りに響かない
- 端末を1〜2年で入れ替えており、壊れた端末は修理せず買い替える運用になっている
- 社用スマホの用途が内勤に限られ、外へ持ち出す機会がほとんどない
- 端末単価が3万円台までで、1回の修理費が新品価格に近い水準になる
この4つに当てはまるなら、年184,800円を払う理由は薄くなります。 保険料より買い替えのほうが早いためです。
個人の端末で同じ判断をする場合はスマホの保証はいらないかを調べた記事のほうが近い条件で書いています。
逆に、外回りの社員が持ち歩いていて、端末が10万円を超えていて、3年使う前提なら話は変わります。1回の修理費が端末価格の3割を超えてくるからです。
社用スマホの保証が必要かは1回の修理で出る額を見ると分かります
年額の総額より先に、1回あたりの数字を見ます。保証に入っても自己負担がゼロになるわけではないからです。
加入していても払う額を並べます
| 項目 | AppleCare+ | モバイル保険 |
|---|---|---|
| 画面のみの修理 | 3,700円 | 自己負担なし |
| 背面ガラスのみ | 3,700円 | 自己負担なし |
| その他の損傷 | 12,900円 | 自己負担なし |
| 盗難・紛失 | 12,900円(iPhone) | 置き忘れと紛失は対象外 |
| 1回の上限 | 定めなし | 主端末は年間150,000円まで |
| 修理不能・盗難の上限 | — | 主端末37,500円 |
AppleCare+は加入していても、修理のたびにサービス料が発生します。その他の損傷は12,900円で、画面と背面ガラス以外はここに入ります。
モバイル保険には免責金額がありません。主端末は年間150,000円までの範囲で、修理費の実費が戻ります。
上限を超えた分は会社の負担に戻ります
ただし修理不能や盗難のときは37,500円が上限です。10万円のスマホが盗まれた場合、戻るのはその一部にとどまります。
2つのサービスをどう使い分けるかはアップルケアとモバイル保険を比べた記事に書きました。
社用スマホの保証が必要かを社員22名22台で計算しました
数字を入れます。社員22名に1台ずつ社用スマホを貸している会社を想定しました。
年額の総額を並べます
| 方式 | 契約数 | 年額 | 1台あたり |
|---|---|---|---|
| モバイル保険(1名1契約・主端末のみ) | 22 | 184,800円 | 8,400円 |
| AppleCare+(iPhone・年払い) | 22 | 294,800円 | 13,400円 |
| AppleCare+(iPhone・月払い) | 22 | 353,760円 | 16,080円 |
| 保証なし | 0 | 0円 | 0円 |
モバイル保険は月700円で、22契約なら年184,800円です。AppleCare+の年払いは1台13,400円なので、22台で294,800円になります。
その差は年110,000円です。月払いを選ぶとさらに58,960円ふえます。
4列目の0円が一番読みにくい数字です
保証なしの列は0円に見えます。ただしこれは、修理が1件も起きなかった年だけの0円です。
さきほど条文で見たとおり、起きた修理の費用は社員へ回せません。年に2件出れば、その2件分がそのまま会社の支出になります。
社用スマホ以外にMacBookやiPadも配っている場合は法人の端末保険を比較した記事で66台の構成を計算しています。
モバイル保険は副端末を使えば1契約3台まで登録できますが、被保険者は1名です。社員1人に1台という構成では、主端末の枠を22契約ぶん使う形になります。
社用スマホの保証が必要かを決める前に置き忘れの扱いを見ます
保証を買う側に傾いた人は、ここを先に読んでください。入っても戻らない場面があります。
補償されない場面を並べます
- 置き忘れまたは紛失によって生じた損害は、モバイル保険の対象外です
- 故意または重大な過失、法令違反によって生じた損害も対象外です
- 日本国外で生じた損害は補償の対象になりません
- AppleCare+の盗難と紛失は「探す」が有効になっていたことが条件です
- AppleCare+の盗難・紛失サービスは12か月ごとに2回までです
営業で外を回る社員が電車に置いてきた場合、モバイル保険は使えません。盗難は対象ですが、置き忘れは対象外という線引きです。
海外出張のある会社も見ておく必要があります。日本国外で生じた損害は補償の対象になりません。
モバイル保険は法人でも契約でき、月額700円(非課税)で1契約に主端末1台と副端末2台の計3台を登録できます。主端末は修理可能な損害なら年間15万円まで、副端末2台は合計4.5万円までが上限で、自己負担となる免責金額はありません。契約者を法人にでき、被保険者も端末もあとから変更できます。
置き忘れと紛失は対象外ですが、修理と盗難は上限まで実費が戻ります。
デメリットのほうを先に確かめたい場合はモバイル保険の法人利用でのデメリットをまとめた記事を読んでから決めてください。
社用スマホの保証が必要かは端末の調達方法でも変わります
保証を買うと決めても、その端末が登録できるとは限りません。調達の経路によっては対象から外れます。
登録できない端末の条件
- 家族、知人、オークション等からの購入または譲渡された端末は対象外です
- 中古品は法人が運営している販売店で購入し、3カ月以上の製品保証が確認できることが条件です
- メーカーまたは正規サービスプロバイダが修理対応を行っている端末である必要があります
- 技適マークがあり、日本国内で使用することが認められている端末である必要があります
社員が私物で買ったスマホを会社が買い取って社用にした場合、1つ目の条件で外れることがあります。譲渡された端末という扱いになるためです。
中古で揃える会社は、保証の要否より先に登録できるかを確かめます。個人間取引のフリマアプリで調達した端末は、購入先の条件で外れます。
複数台を1つの契約にまとめる考え方は複数端末の補償を一本化する方法をまとめた記事に書いています。
社用スマホの保証が必要かを不要と決めた会社が先に整える3つのこと
保証を買わないという判断も、条件が揃えば正しい選択です。ただし何も整えずに保証なしにすると、修理のたびに揉めます。
保証を買わない会社が先に決めること
- 貸与規程に破損時の金額を書かない。書くなら故意または重大な過失があった場合は個別に協議する、というところまでにとどめる
- 給与からの控除を運用に組み込まない。控除するなら過半数代表者との書面による協定という別の手続きを踏む
- 修理費を年間の予算として先に積む。都度稟議にすると修理が遅れる
- 修理が完了するまでの代替機を1〜2台用意しておく
3つ目が抜けたまま保証なしにすると、そこで詰まります。 稟議が下りるまでの1週間、社員が私物のスマホで仕事を続けることになります。
貸与規程に破損時の金額が書かれていないかを先に確認します。書いてある場合、その条項は第16条の制限に触れます。

法人名義で契約できるかどうかは法人がモバイル保険を契約できるかを調べた記事で確かめてください。
社用スマホの保証が必要かについてよくある質問
Q. 社員が社用スマホを壊した場合に修理費を請求できますか
A. 金額を先に決めておく形での請求はできません。
労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定めることと、損害賠償額を予定する契約をすることを禁じています。故意や重大な過失があった場合に個別に協議すること自体は、これとは別の話になります。
Q. 就業規則に弁償の金額を書いておけば社員に請求できますか
A. 書いても第16条の制限は外れません。
損害賠償額を予定する契約が禁じられているため、就業規則に金額を書く形も同じ扱いになります。減給の制裁として定める場合は第91条の上限が適用されます。
Q. 社用スマホの修理費を給与から差し引くことはできますか
A. 原則として差し引けません。
第24条第1項は賃金の全額払いを定めています。控除するには、労働者の過半数で組織する労働組合または過半数を代表する者との書面による協定が要ります。
Q. 社用スマホを置き忘れた場合も保証で戻りますか
A. モバイル保険では置き忘れと紛失は対象外です。
重要事項説明書の免責事由に明記されています。盗難は対象になるため、そのときの状況で扱いが分かれます。
Q. 社用スマホの保証は契約者を会社にできますか
A. モバイル保険は保険契約者を法人にできます。
約款第30条では契約上の一切の権利・義務を第三者に承継でき、第31条では被保険者も変更できます。AppleCare+は端末を使う人のApple IDに紐づきます。
Q. 中古で買った社用スマホにも保証を付けられますか
A. 購入先と保証期間の2つが条件になります。
法人が運営している販売店で購入し、その時点で3カ月以上の製品保証が確認できる状態であることが求められます。個人間取引で入手した端末は対象から外れます。
Q. 社用スマホの保証を付けても自己負担は残りますか
A. サービスによって残り方が違います。
AppleCare+は修理のたびにサービス料が発生し、その他の損傷は12,900円です。モバイル保険は免責金額がありませんが、修理不能や盗難のときは主端末37,500円が上限になります。
Q. 社用スマホの保証を解約したら保険料は戻りますか
A. モバイル保険には解約返戻金がありません。
重要事項説明書に明記されています。AppleCare+の解約と切り替えの手順については法人のAppleCare解約と切り替えをまとめた記事に書きました。
社用スマホの保証が必要かという問いは、料金表の前に一度だけ労働基準法へ寄り道すると答えが出ます。修理費を社員へ回せないなら、その費用は会社の固定費として積むか、保険料として先に払うかの二択です。
どちらを選ぶかは年間の修理件数で決まります。過去3年の修理履歴を数えるところから始めてください。
決め手は月額ではなく、修理費を誰の財布から出すかです。
※料金や条件は変わることがあります。加入前に、最新の内容を公式ページで確認してください。